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2018年にモバイル広告業界を騒がせた4つの出来事

モバイル広告業界にとって非常に目まぐるしい変化に満ちた2018年が終わりを迎え、業界をにぎわせたストーリーや変化、トレンドを振り返る絶好の機会が訪れました。

昨年のモバイル広告における一大トレンドとストーリーは何だったのでしょうか。今回は、年間を通じてセクター全体を騒がせた4つの出来事を振り返ってみましょう。

GDPRがセクターとユーザー間の信頼関係構築の架け橋に

2018年前半に施行されたEU一般データ保護規則(GDPR)は、当初業界における最大の変化かつ懸念とされていました。

GDPRは多くのモバイル広告事業者から厄介な存在として受け止められていました。ユーザー個人の権利が強化され、データプロセッサー(処理者)およびコントローラー(管理者)に対する法的責任が増したことが、モバイル広告ビジネスにとって大きな足かせとなると考えられていたのです

しかしながら、業界はそうした試練を乗り越えただけにとどまりませんでした。インターネット広告業界団体(IAB)の報告によると、ヨーロッパの2018年上半期の広告費は10%上昇し、モバイル広告費は初めて100億ユーロを突破することとなったのです。

それどころか、Appleなどの企業はGDPRがヨーロッパのデータ処理における標準規格となり、さらにはデジタルビジネスにおける世界標準規格の1つになりつつある流れを歓迎しています。

このように GDPRが好意的に受け止められた理由は、GDPRがユーザーにより大きな権限を与え、配信広告に煩わされる可能性を減らしてくれるということにあります。IABのAnton Kopytov氏は、「GDPRは、ユーザーとの信頼関係を築く上で、むしろプラスの影響をもたらしている。」とコメントしています。

つまり、規制がなくほぼ無法地帯となっていたかつての状況より、長期的な産業成長を目指す上で、より強固な基盤を築くことができるようになったのです。

Facebookの信用失墜

2018年にモバイル広告業界に激震が走ったストーリーとして、Facebookの信用失墜があります。

Cambridge Analyticaのスキャンダル(5千万人以上のFacebookユーザーの個人情報を収集し、選挙の投票意思を分析するシステムを構築する目的で無断流用)が2018年の3月に暴かれ、以後もFacebookにまつわるスキャンダルが次々と明るみになりました。

Mark Zuckerberg氏は、米国議会や欧州議会に召喚され、同社の政治関与の釈明を求められました。ずさんな個人データの管理により、同社は窮地に立たされることとなったのです。

こうした一連の出来事は、Facebookの経営にも大きな打撃を与えました。同社は依然として堅調な収益を上げてはいるものの、2018年第2四半期の伸び率は過去最低となり、2018年第3四半期のデイリーアクティブユーザーとマンスリーアクティブユーザーの増加数は市場予想を下回る結果となっています。

GDPRがユーザーの信頼というコインの面だとすると、Facebookはそのコインの裏面であることは間違いないでしょう。Facebookの例からわかることは、ユーザーの個人データをぞんざいに扱う企業はますます不利な立場に立たされるようになっていくということです。

 3社複占体制の実現

2018年はFacebookにとってさらに予期せぬことが起きました。デジタル広告における同社とGoogleの複占状態が、Amazonの台頭により揺らぎつつあります。

2018年は、Amazonがモバイルおよびデジタル広告に力を注いだ1年でした。インストア広告、DSPおよびカスタム広告などのサービスAmazonがAdvertisingとして統合されて以来、コンスタントに膨大な収益が生み出されています。

同社の2018年第3四半期の広告事業の収益は222%の増加を達成しました。このような目覚ましい成長により、Amazon Advertisingは年間数十億ドル規模の事業へと変貌を遂げ、広告代理店や広告主の間で、消費者に効果的にリーチするための新たな手段として脚光を浴びています。

もちろん、AmazonFacebookGoogleと勝負できるようになるまでは、まだ長い時間がかかりそうです。同社の広告収入はこれらの2強にくらべると依然としてわずかなものであり、対抗するためには広告商品のさらなる差別化と強化を行っていく必要があるでしょう。

何はともあれ、Amazonのモバイルおよびデジタル広告分野への進出は目を見張るものがあり、今後も目が離せない存在です。

アプリ内ヘッダービディングが主流に

モバイル広告業界における大きな技術的進歩の1つとして、「アプリ内ヘッダービディング(ヘッダー入札)」の台頭が挙げられます。

これはデスクトップのヘッダービディングから派生したアプリ内のリアルタイムの広告入札を可能にする手法です。従来の「ウォーターフォール」によるアプローチでは、過去の支出に基づき広告主の優先順位付けが行われるため、広告主は自分の順番が回ってくるまで待つほかありませんでしたが、アプリ内ヘッダービディングでは、同時一斉に入札を行うことができるようになりました。

そのため、広告枠に対し過去のデータに基いて最高値であると判断した入札額を選び出すのではなく、本当に入札額が高いものを選ぶ入札システムが実現したのです。

こうしたアプリ内ヘッダービディングは従来のプログラマティック配信をより効率化できる画期的な進歩となりました。Facebookのアプリ内入札サービスを利用したパブリッシャーは最大20%の収益増加を実現しており、従来のウォーターフォール型からの移行で、より多くの収益が見込める可能性を証明しています。

しかしながら、導入における障壁は依然として高くなっています。他の広告配信技術にも当てはまることではありますが、アプリ内ヘッダービディングを検討するアプリ開発者は、アプリ内ヘッダービディングのプロバイダー用に複数のSDKを統合しなければならないなど、より少数のパートナーによるワンストップのメディエーションサービスに比べ、課題も残されています。

しかしながら、モバイル市場における競争がかつてないほどに激化する中、アプリ内ヘッダービディングが従来のモバイル広告配信システムのように広く用いられるようになれば、将来的にはより多くのパブリッシャーが成功を収められるようになっていくでしょう。