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AIはデジタルマーケティングをどのように変えるか

デジタル分野の運用を担うマーケターにとっての今日の最大の課題は、あらゆる側面に及ぶ見込み客への訴求機会の規模を把握し、対処していくことです。

デジタル分野の運用を担うマーケターにとっての今日の最大の課題は、あらゆる側面に及ぶ見込み客への訴求機会の規模を把握し、対処していくことです。

Facebookのユーザー数が20億を突破したことからもわかる通り、今やデジタルは全世界に浸透し、即時のリアルタイムビディングや細分化されたデータがビジネスに欠かせない存在となっています。しかしながら、詳細なレポートや分析ツールを以ってしても、それらを人間のみで管理するのは至難の業です。

こうしたこと背景として、人工知能(AI)が将来のマーケティングにおいて重要な役割を果たす存在として注目を集めるようになっています。

ビッグデータの時代が到来した昨今、デジタルマーケティングチームをサポートするAIを開発できる企業は、膨大な情報をよりうまく処理、管理、活用し、莫大な利益を得られるようになるでしょう。

世界中に広がるAI

かつてAIはサイエンスフィクションの域を出ない存在でした。ロボット工学やビデオゲームのような分野で応用されてはいたものの、より広い経済圏でAIを活用するというアイデアは、ごく最近までありえないこととされてきたのです。

しかしながら、ここ10年で経済が大きな転換期を迎え、AIアプリの開発が現実味を帯びることとなりました。スマートフォンの登場と、モバイル経済の爆発的な拡大が、AIの活躍の場を変えたのです。

世界人口の約3分の2が強力なプロセッサーを搭載したスマートデバイスを日常的に使用しています。つまりAIの学習にとって必要十分以上のインタラクションを提供するデバイスが世の中に存在しているということになります。

例えば、ある人が病気にかかりやすい時期を分析するAIを開発するとなると、以前は他の患者の記録を用い学習を行う必要がありました。しかし今日では、iOSなどのオペレーションシステムにより、毎日何百万ものデータポイントから健康に関するメタデータを得ることができ、そうしたデータをユーザーデバイスのアプリと統合させることができるようになりました。

このようなクラウドベースでパーソナライズしたマスコンピューティングによりAI分野は急速な進化を遂げており、各企業がこぞって莫大な開発投資をつぎ込むようになっています。

すでにApple、Tencent 、Google は、社内にAIプロジェクトの専任チームを設けています。また、 いち早くAIに目を向けた投資家の60%が、この分野にさらなる投資を行うを意向を示していることから、同分野はマーケティングを含むあらゆる領域で今後ますます成長を遂げる見込みがあるといえます。

AIとマーケティングの接点

AIのマーケティングにおける活用法を見定めるためには、AIの設計をサポートする3つのアプローチやメソッドを理解しておくとよいでしょう。

AIを作成する最初のアプローチとしてルールベースがあります。このアプローチにおいては、開発者がユーザーや他のAIの行動に応じて、特定の方法でAIが動作するようにルールを設定します。

例えば、プレイヤーが逃げ延びなければならないゲームにおいては、敵に発見された場合にゲームを盛り立てるようにAIをプログラミングします。「Alien:Isolation」のように、このタイプのAIは、周囲の状況を学習し適応することで、作成者が設定したルールに当てはまる事象が起きた場合に動作します。

マーケティングにおいては、こうしたAIはプロセス指向のカスタマーインタラクションの管理に向いています。たとえば、チャットボットを作成し、ユーザーがサイトで長時間アイドル状態になっている時に助けがいるかどうかを尋ね、一般的な質問に対し役立つ回答を提供したり、問題が解決しない場合はより上位の担当者にエスカレーションしたりすることができます。

ルールベースのAIを活用することで、コミュニティおよびカスタマーのサポートチームは、大規模なユーザーベースを容易に管理でき、サポートを必要としているユーザーを見定め、継続率の維持に役立てることができるでしょう。

マーケターにとって有益となりうる2つ目の手段は、AIの機械学習です。このアプローチでは、AIが分析プロセスを自動化し、データを評価・理解し、最小限の人的介入で動作することが可能です。まずはルール化したコンポーネントの分析学習からスタートし、情報を集積するにつれて自発的に動作するようになります。

機械学習をマーケティングで最大限に活用できる分野はユーザー獲得です。リアルタイムビディングのプロセスの大部分はすでに自動化されていますが、今後はAIの機械学習の活用により、購入サイクル全般を管理することができるようになるかもしれません。

販売サイトから得られる個人データやキャンペーンデータ、さらにはパフォーマンスに至るまで、獲得サイクルの全般におよぶ情報の評価が可能になれば、メディアバイヤーの手間を大幅に減らすことができるでしょう。

将来的にはこうしたAIの機械学習により、担当者自らが様々なチャンネルのバイイングを行う必要がなくなるかもしれません。またこれにより、広告主はリーチを拡大し、パーソナライゼーションへの取り組みを強化することができ、バイヤー、リターゲターさらにはビジネス全体に利益がもたらされるようになるでしょう。

上記のアプローチ以外にも、マーケターが押さえるべき、スケール化においての活用が期待できる3つめの技術があります。

プロシージャル(自動生成)は、アルゴリズムによるデータ生成プロセスを指す用語です。プロシージャルでは、デザイナーがコンテンツを作成するかわりに、一連のルールと前もって設定した発生確率に基づいてコンテンツが自動的に作成されます。

プロシージャル自体はAI技術ではありませんが、動的なエクスペリエンスを生み出すために、AIとともによく併用される手法です。

前述のとおり、この分野を牽引しているのがビデオゲームです。Valveのゾンビだらけの世界を生き延びるマルチプレイヤーゲーム 「Left 4 Dead」のAI監督は、AIの機械学習とプロシージャルを組み合わせ、プレイヤー同士の協力の度合いに応じて、ゲーム内でさまざまな脅威を生み出します。

プレイヤーたちがうまくプレイすれば、より強力な敵が現れ、反対にそうでなければ、敵の数はより少なく、倒しやすくなり、対抗するボットも現れず、回復が容易になります。プロシージャル要素がAIの機械学習の価値を最大限に高め、ゲームの成功に一役買っているのです。

こうしたアプローチを機械学習によるメディアバイイングに応用すれば、圧倒的優位に立てる可能性は高いといえます。ただしリスティングの要件に応じて、常に新しいイメージを用意しなければならなくなることもあり、多くのバイヤーがAIの機械学習につまづいてしまうかもしれません。

しかしながら、ビジネスにおいてAIの機械学習とプロシージャルシステムによる複製機能を組み合わせることができれば、デザインチームを煩わせることなく、クオリティの高いイメージをAIにより作り出せるようになります。また、そうして節約できた時間を、AIが必要とされるシーンでよりよく動作し、日々システムがスムーズに動作するように、AIのモデレート、管理、およびファインチューニングにあてることができるようになっていくでしょう。

総括煩雑なプロセスを簡素化させる

AIをマーケティングの変革に活用する方法は他にもたくさん存在します。市場の動向に応じた動的な製品の価格設定、予測作業のサポート、コンテンツのパーソナライズなど、さまざまなアプリに応用が利くといえます。

しかしながら、マーケターが注意を払うべき肝心な点は、AIアプリの正確性ではなく、アプリがいかにして今までの決まり事を変えることができるかということにあります。前述のように、優れたルールベースのAI、機械学習、プロシージャルをマーケティングに活用することで得られるメリットは、日々のタスクの効率性を高められるということです。

そうしたことにより、マーケティング分野に大きな変化がもたらされることになるでしょう。マーケティングAIは最前線の兵士として行動するのではなく、マーケティングのプロフェッショナルをデジタルフィールドの将軍に引き上げる黒子となり、AIリソースのデプロイにおいて最も効率的な方法を見定めながら、あらゆる場所で適格なターゲティングをサポートしてくれることでしょう。

つまり、AIはデジタルマーケティングにおけるスケール問題を解決に導くことができるといえます。マーケターが直面する問題は、こうした問題が解決された後、その先どのようにAIを活用していくかということになるでしょう。