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App Storeのこれから

AppleApp Storeをローンチしてから10年が経ちました。しかし、それよりもはるか以前からモバイルゲームの配信は行われており、この先もますますの発展を遂げることが見込まれています。

現在も、AndroidバージョンのFortniteの配信を決めたEpicに関する熱い議論から、ソーシャルメッセージベースのゲーム配信やインスタント/チャットゲームの増加、分散型ブロックチェーンベースのアプリストアのポテンシャルなど、 AppleGoogleTencentQihoo 360Xiaomiといった企業を混乱させるような要素があふれかえっています。

小規模ビジネスから一大ビジネスへ

モノクロ画面の旧式の携帯電話が使われていた当時は、ゲームをダウンロードできないため、モバイルゲームはインターネット環境でのみプレイされていました。その後、ゲームのウェブリンクを掲載し、プレイ可能なタイトルを紹介するポータルサイトが登場し、初期のアプリストアの原型となりました。

その後ヨーロッパでJava、米国ではBREWが登場し、ゲームをモバイルにダウンロードできるようになったことで状況は複雑化しましたが、日本においては当時iモード等が主流で、ウェブがモバイルゲームを支配する状態でした(HTML5の愛好家は、特にブラウザにアクセスしあらゆるデバイスでゲームをプレイできる状況においては、ダウンロードなど必要ないといまだに断言しています)。

このようにしてモバイルゲームにアクセスしていた当時は、大手の仲介者、通常はモバイルオペレーター(携帯電話事業者)がデータコストを管理し、多くの場合においてゲームへの実際のアクセスも管理していました。そのような状況においては、プレイヤーはプレイしたいゲームタイトルがない場合、モバイルオペレーターを変更するか、プレイをあきらめるという選択肢しかありませんでした。

かつてはこのように「壁に囲まれた庭」の状況でしたが、App Storeの登場により、開発者が個々に収益を得られる方式が確立し、熱狂的に迎え入れられることとなりました。あらゆる開発者が自身のゲームをリリースすることができ、対応する携帯電話さえあれば誰もが世界中のどこにいてもダウンロードできるようになりました。さらに、開発者は収益の70%を手にできるようにさえなったのです。

これ以上によい状況があるでしょうか?当時の盛り上がりは相当なものでした。 

すべてを支配する2大ストア

それから10年が経ち、アプリが2500億回もダウンロードされ1500億ドルもの収益が得られるようになった現在の状況は非常に異なっています。

欧米諸国では、モバイルOSを独占するAppleGoogleがモバイルゲーム配信を支配するようになり、アプリストアの利益配分を70%30%とすることが、業界基準となっています。

実際のところ、ほとんどのモバイルゲーム開発者が、30%の取り分を諦めなければならないものの、グローバルな配信や、益々多様化するアプリストアのサービスから大きな恩恵を受けられるために、仕方のない代価として受け止めています。

この状況はよりオープンなアプローチを提供するGooglePlayストアに特に当てはまります。早期アクセスや事前登録でローンチ前からコミュニティを構築でき、コンテンツの即時のアップデート、オーバーザエアー(無線)でのダウンロード、プロダクトテスト、広範にわたるA/Bテスト、さらには最新の追加機能である「今すぐ試す(TRY NOW)」ボタンが導入できたりと、多岐にわたるサービスを受けることができるのです。

App Storeは、こうした開発向けのツールの数が少なく、Appleの「壁に囲まれた庭」は、Googleのアプローチと対照的な存在となっています。しかし、デバイスが統一されたAppleではハードウェアのサポートがより簡単で、中国を含めた真のグローバル配信が実現でき、AppleのユーザーはAndroidのユーザー以上に利用時間が長いため、ほとんどの開発者にとって、App Storeは収益性の点で最も重要な存在となっています。

もちろん、多くの大企業が依然として独自のアプリストアを運営していますが、SamsungGalaxy AppsAmazonAppstoreはハードウェアやeコマースで成功しているにもかかわらず、わずかな顧客にしかリーチできていません。

App StorePlay Storeはこれまでになく普及し成功を収めていますが、長期的な視点では、今後の成功を疑問視する考えもあります。それはなぜでしょうか。

Epicによる問題提起

Playストアではなく、自社のウェブサイトからFortniteAndroid版をリリースすると決定したEpicは、多くの議論の的となっています。特に、FortniteAndroid版のリリースにおいて、ディシジョンメーカーであるCEOTim Sweeney氏が、「寄生的な」30%の収益シェアと発言を行ったことが、大いに世間を騒がせました。

Epicのこうした決定を受け、他にも同様のアプローチをとる企業が現れたのも興味深い点です。たとえば、Netflixは一部の国において、30%を節約するために、ユーザーにアプリストアを経由せずに、ウェブ経由で直接支払いを行うように誘導するテストを行っています。

アプリストアへの対抗馬となりつつあるのは、ユビキタスなソーシャルネットワークやメッセージネットワークが利用されるようなったことで、再び脚光を浴び始めた即時型のプレイアブルゲームである「HTML5」です。

アプリストア経由でのダウンロードを促しつつも、既存の手法を進化させてきた韓国のカカオ、日本のLINE、中国のWeixinWeChat等のアプリが利用されているアジア諸国においては、後者の価値は以前から認められていました。

欧米諸国ではより複雑な状況が生まれています。Facebookはここ2年程、メッセンジャーアプリを利用したHTML5ゲームをプッシュしており、Androidでは開発者のゲームのマネタイズも可能となっています(Appleは対象外)。Facebookは、開発者へのアピール材料として、モバイルアプリ内課金による収益をカットせず、開発者の取り分を70%としています。

インスタントゲームは、ダウンロードの必要がないために、アプリストアを必要としませんが、アクセスや見つけやすさにおいて課題が残されています。 例えば、ダウンロードなしでは、アプリアイコンを置くこともできないため、ユーザーエクスペリエンスに支障が生じます。

したがって、今後モバイルゲーマーがアプリストアを経由せずに、ゲームにアクセスしプレイできるようになったとしても、アプリストアのような機能が依然として求められるでしょう。

収益性の高いアンバンドリング

次に、Microsoft Storeの変更に対し、今後App Storeがどのように適応しなければならないかという点を、別の例として取り上げます。Micro Storeはモバイルアプリストアではありませんが、ゲームの収益分配を85%対15%としています。

これは70%対30%という業界基準を大幅に逸脱しているだけでなく、ディープリンクからのストア流入による購入の場合(ストア上の検索クエリや、直接購入でない場合)、収益分配は95%対5%になります 。

こうしたアンバンドリングは非常に大きな意味を持ちます。アプリストアは、初めて開発者の収益分配率を購入ソースによって変化させることに同意したのです。Microsoftは、ストアがゲーム購入のきっかけとなった場合は収益の15%を取り分とし、そうでない場合は取り分をたった5%としています。Tim Sweeney氏もこの点には大いに賛同することでしょう。

多様なブロックチェーンベースのゲーム配信チャンネルがローンチするにつれ、このような圧力はさらに高まっています。70%対30%ではなく、開発者にとってより有利な収入分配分率である85%対15%が、急速に業界水準となりつつあります。

中には開発者に収益の100%を提供するものもあり、ゲームやゲームアイテムの再販においてコストを削減し、さらなる収益源を得るための二次販売をサポートできる点が強調されています。

モバイルゲーム配信においては、AppleGoogleTencentQihoo 360Xiaomiなどの独占が今すぐに終わってしまうことはないでしょうが、大小さまざまな競合相手がこうしたビジネスに参入してきています。

したがって、こうした企業が提供するサービスやファイナンシャルモデルにおいて、今後変化が起こり、混乱が生じる可能性は非常に高いでしょう。誕生から10周年を迎えたApp Storeの今後の幸運を願うばかりです。