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クレメント・ツァオ:iOS14でIDFAの使用を制限するアップルの決定がモバイル広告業界に大変動と機会をもたらす理由

イノベーションと急速な変化が常に起きている業界にとっても、アップルがユーザーのプライバシーを保護するべく、デバイスの固有識別子(IDFA)へのアクセスをオプトインに限定すると発表したのは重大な瞬間でした。

アップルは事実上、モバイル広告活動のターゲティング方法や測定方法、評価方法が大きく変わることを、その3ヶ月前になってモバイル業界全体に対して予告した格好です。iOS14の登場により、消費者はアプリがIDFA(Identifier For Advertising、広告用識別子)を共有するか否かを選択できるようになります。つまり、ユーザーがアプリのデータをサードパーティ製アプリと共有することを明示的に許可しない限り、iOS上で表示する広告のために詳細なアトリビューションを構築することが不可能になるのです。

多くの業界評論家は否定的な側面に注目していますが、公平な見方を維持することが重要です。プライバシーや広告詐欺をめぐる問題は何年も前から存在しています。今こそ、消費者をあらゆる行動の中心に据え、業界はこれを機に新たな方向性を打ち出すべきではないでしょうか。 

短期的には、アップルの決定の影響を受ける広告会社やプラットフォームは、透明性と測定の観点から、広告主に何を提供できるかを正確に評価する必要があるでしょう。業界がモバイル広告の測定と追跡の方法を変えるのであれば、問題は自ずと解決するなどと偽っても無駄です。広告主に対して率直で誠実であることは、信頼を再構築する上で欠かせない第一歩です。

長期的には、広告ネットワークはFacebookやグーグルのような体制を整え、インベントリと広告トラフィックを持つ独自のエコシステムを構築し、パフォーマンスベースの広告活動を引き続き提供できるようにする必要があると思います。広告活動は、セキュリティの高いプライバシー中心の方法で実施しなければなりません。

ユーザーのターゲティングデータの購入に依存している広告会社は、そのようなデータの管理が非常に緩慢な市場で事業を継続することが難しくなる一方で、独自のデータに基づいて新しいターゲティングモデルや測定モデルを構築できる広告会社はシェアを伸ばすでしょう。その結果、プライバシーとセキュリティに関する高い期待に応えながらも、オーディエンスの規模を拡大できる広告会社だけが勝ち残ることになるでしょう。

当社のプログラマティックプラットフォームであるMintegralは、すでに何千ものパブリッシャーと直接のパートナーシップを築いています。大量の履歴データを持つ数少ない独立系サードパーティプラットフォームのひとつであるMintegralは、すでに機械学習を利用して、アップルの変更によりブロックされるサードパーティのトラッキングに依存しない広告ターゲティングモデルを構築しています。このことから、新しい状況においても、当社の偏りのない独自のデータは、広告主が今後も継続して成功することに寄与するものと当社は確信しています。

データのセキュリティとプライバシーは、当社にとって常に重要なものです。Mobvistaが提供するNativex、Mintegral、GameAnalyticsなどのさまざまなサービスは、パートナーや顧客が可能な限り最高の広告体験を提供するために利用するデータの取り扱いを、当社に任せることができると示すために共同で努力を重ねてきました。アジア太平洋(APAC)で最大のモバイル広告テクノロジープラットフォームのひとつである当社は、GDPR、CCPA、COPPAに完全に準拠し、また験であるべきだという信念を共有する企業や広告主こその認証取得も控えており、データとプライバシーの保護に努めています。当社が処理するデータのセキュリティは、私たちにとって最重要事項です。

この変化がどのような影響を与えるかが完全に明確になれば、業界の変化に対応するための知識と技術を手に入れることができると考えています。重要な点として、私たちは企業として常に機敏に行動してきましたが、来年にはこの能力がこれまで以上に重要になってくるでしょう。

幸いなことに、当社は長年にわたり、広告主や測定パートナーと強固で協力的な関係を築いてきた経緯があり、これもまた、この変化の時期を一緒に乗り越えるための助けとなるでしょう。

では、この新しい現実にどのように対処すればよいのでしょうか。先に述べた通り、iOS14のローンチは9月であり、何ら明確な情報は出ていません。しかし、いくつかのシナリオが想定できます。

1, アップル独自のトラッキングソリューションであるSKAdNetworkが新しい業界標準になる。現在のアトリビューションアプローチを廃止することで、アップルが自前の代替案を導入する機会を得ることは明らかです。これは短期的には最善の選択肢と思われます。どの広告が望ましい行動を生じさせたのかを、広告ネットワークが広告主に伝えることができるからです。ただし、どのデバイスまたはユーザーが広告をクリックしてインストールしたのかを特定することはできません。

出典:アップル

アップルはまた、SKAdNetworkを通じたアトリビューションにより、Apple Search Adsにより多くの広告主を呼び込む準備をしています。App Storeに対する「ウォールドガーデン」アプローチは健在のようです。これにより、アップルのエコシステムに満足している広告主にとっては、プロセスがシンプル化するかもしれませんが、その一方で選択肢が減少し、広告をパーソナライズする能力が失われる恐れがあります。これは、ここ数年間のトレンドに逆行するものです。

2. IDFAを代替するコンテキストターゲティングなどの代替ソリューションが出現する。グーグルが2022年までにChromeブラウザからサードパーティのクッキーを削除する と発表する以前から、消費者広告をGDPRに準拠した方法で提供する手段として、コンテキストターゲティングが浮上していました。コンテキストターゲティングはIDFAで可能である詳細なユーザープロファイリングに取って代わることはできませんが、AIの進歩により、ユーザーの行動や嗜好に関する文脈を理解するための手法が大幅に改善され、ターゲティングおよびパーソナライズされた広告活動の構築を継続できるようになると私は考えています。

3. 業界がIDFAの終焉を受け入れ、業界全体でオプトインが義務化される。IDFAの使用を制限するアップルの決定が注目されていますが、グーグルが独自のトラッキングIDであるGAID (Google Advertising ID) でこの動きに追随するかどうかはわかりません。長期的には、広告主やアプリのパブリッシャー(と消費者)が標準化されたアプローチの恩恵を受けられるように、少なくとも足並みは揃えたほうが良いのでしょうか。もしそうなれば、IDFAはユーザーにオプトインを要求するようになるでしょう。広告収入に大きく依存しているアプリが、広告トラッキングへのオプトインをアプリ使用の条件にするということは十分にあり得るのです。

4. 業界が未来を革新する。モバイル業界が大変動に直面したのはこれが初めてではありません。アップルは2012年に広告主が消費者を追跡するためにUDIDを使用することを禁止し、今回と同様の反発を引き起こしましたが、私たちの業界はこの問題を回避するための革新的な方法を見出しました。当社はすでに、あらゆるアトリビューションパートナーと共同で、フィンガープリントからアップルの規則に準拠した新しいAPIに至るまで、パーソナライズされた体験を作成するための代替方法を模索しています。

アップルの動きは意図的な「ディスラプション」に思えるかもしれませんが、それによってユーザーがモバイル体験の管理権を取り戻すことができたことに間違いはありません。広告はネガティブな体験ではなく、ポジティブな体験であるべきだという信念を共有する企業や広告主こそが、モバイルユーザーの信頼と注目を獲得し、この瞬間を力強く切り抜けることができると私は信じています。

業界全体が、この変化による影響を感じられるのがいつになるのかを注視しています。現在の状況は不確実かもしれませんが、私は当社や提携企業、そしてアトリビューションパートナーが、将来への道筋を描く能力を持っていることを確信してやみません。