Google Playの誕生から10年の月日が経ちました。2008年10月22日にAndroidマーケットという名称でローンチした当初は、わずか12本ほどのアプリを扱うのみでしたが、今やGoogleのアプリストアは260万本ほどのアプリを抱え、経済全体に影響を与えるほどの大きな存在となりました。
Googleアプリストアが10年という節目を迎え、今こそがその過去を振り返る絶好のタイミングであるといえます。App AnnieのGoogleストアの歴史をひもといたレポート「データで振り返るGoogle Playの10年」では、ストアの過去、現在、未来の予測に至るまでが、数字や分析を交え紹介されています。今回は当社がそのレポートから得た4つの学びをご紹介します。
膨大なダウンロード数と急増する収益
これまで、Google Playストアはダウンロード数は稼げるものの、得られる収益はそれほどでもないというイメージを持たれがちでした。しかしながら、App Annieの調査により、ダウンロードに関しては同様の状況を保ちつつ、収益においては急激な変化が生じていることが明らかとなりました。
報告された数字によると、GoogleストアはApp Storeの2倍以上のダウンロード数を獲得しています。2012年初めから2018年夏までの総ダウンロード数は合計3300億となっており、平均すると世界中のすべての人がGoogle Playから50本のアプリをダウンロードしたことになります。
また、App AnnieはGoogle Playの収益が急伸している点にも言及しています。AppleユーザーはいまだにGoogle Play ストアユーザーの2倍程のお金を費やすかもしれませんが、Google Playの収益も2015年から2017年にかけて倍増し、現在では220億ドルに達しています。
さらにApp Annieは2022年のGoogle Playの年間の消費者支出は420億ドルに達する見込としており、将来的にはGoogle Playの巨大なダウンロード基盤がiOSのように収益を生み出すようになる可能性があることが示唆されています。
商業的インパクトの高いモバイルゲーム
Google Playが登場してから10年間で、1000万本近くものアプリがリリースされました。これらのリリースの83%がアプリとなっていますが、残りの割合を占めるモバイルゲームが大きな商業的インパクトをもたらしていることは明らかです
Google Playの全リリースに占めるゲームの割合は17%ですが、全ダウンロード数に占める割合は41%、さらに全消費支出に占める割合は88%にも及びます。また2017年のアジア太平洋地域市場のゲームの消費支出は101億ドルであるのに対し、アプリは9億ドル程度となっていました。
なぜこうした矛盾が生じるのでしょうか。おそらくそれはフリートゥプレイのモバイルゲームの成熟によるところが大きいでしょう。Clash of Clans、キャンディークラッシュ、パズル&ドラゴンズ、Game of War、モンスターストライクなどの短期間で膨大な収益を生み出すフリートゥプレイで、ゲーム業界は驚異的な売上高を達成し、ユーザー獲得などにおいて、モバイルアプリストアにおける成功ノウハウを独占する存在となったのです。しかしながら、アプリもこれに負けておらず、Netflix、Spotify、Tinderなどは、サブスクリプションサービスにより長期的な収益獲得を実現しており、UberやDeliverooなどは「ジャストインタイム(必要な物を、必要な時に、必要なだけ提供)」式のサービスを提供することで、今までにない経済モデルの構築に成功しています。
結果として、多くのアプリがこれまで以上にGoogle Playで膨大な収益を上げるようになっています。2018年には1500本以上のアプリの年間消費支出が1000万ドルを超えており、そのうちの330本は年間1000万ドル超となっています。こうしたことから、アプリの経済は拡大傾向にあることがうかがえ、今後数年間は成長を見込める可能性があるといえるでしょう。
アジア太平洋地域の消費ブーム
Googleのサービスの大半が2010年にブロックされて以来、中国と同社の緊張関係が続いています。その結果として、現在中国ではGoogle Playストアにアクセスすることができないため、同国の巨大なAndroid市場は本レポートでは言及されていません。
しかしながら、中国の不在にもかかわらず、Google Playの消費者支出の50%以上をアジア太平洋地域が占めています。2017年にアジア太平洋地域のGoogle Playにおける消費支出は111億ドルあるのに対し、ヨーロッパ、中東、アフリカは48億ドル、アメリカは61億となっています。
App Annieはこうした地域の台頭は、Googleがキャリアを通した直接課金システムを台湾、タイ、シンガポールといったより多くのアジア太平洋地域の市場に拡大していったことが起因すると分析しています。
Google Playは、2012年以前は韓国と日本でしか利用できなかったキャリア経由での直接課金システムを東南アジアにおいても展開し、同地域での低価格帯Android端末の普及の後押しもあって、こうした新興成長市場において、App Storeよりも優位な立場に立ち、消費者を囲い込むことができたのです。
市場を席巻するアジアのアプリ企業
ゲームの世界の総ダウンロード数においては欧米企業が上位を占めているものの、世界の消費支出ランキングにおいてはアジア太平洋地域の企業が上位の大半を占めています。
世界の消費支出ランキングの上位10本のゲームのうち6本が、アジア太平洋地域のパブリッシャーが手掛けたタイトルです。日本は大ヒットしたガンホー・オンライン・エンターテイメントのパズル&ドラゴンズやmixiのモンスターストライクがチャートを牽引しています。韓国ではNCSOFTとNetmarbleの2作品がトップ10に食い込んでいます。また、中国国外の市場を対象としたパブリッシャーであるElex TechnologyのClash of Kingsはトップ10の前後を推移しています。そのほかにも多くのアジア太平洋地域のパブリッシャーがGoogle Playの消費支出ランキングの上位に入っています。韓国のNetmarble、日本のガンホー・オンライン・エンターテイメント、mixi、BANDAI NAMCO、LINE、SonyはGoogle Playのパブリッシャー別ゲーム消費支出ランキングのトップ10入りを果たしています。
さらに注目すべき点は、中国のパブリッシャーが、ダウンロード数ランキングにおいて著しい成果を出しているということです。
非ゲーム系アプリのダウンロード数ランキングの上位10社のうち4社は中国のパブリッシャーであり、GomoとCheetah Mobileが2位と3位、Alibaba グループが5位、Baiduが7位となっています。また、中国のDoodle Mobileは、欧米のパブリッシャーが上位を占めるGoogle Playのパブリッシャー別ゲームダウンロード数ランキングで首位に輝きました。収益性の高い中国市場へのアクセスがなくとも、Googleはサービスを提供するその他の地域を基盤として成果を上げることに成功しているのです。