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Glu Mobile、G5、RovioのUA戦略に見るマーケティングとマネタイゼーションの動向

モバイルユーザーをもっとも効率の良い方法で獲得することで、ユーザーのエンゲージメントや収益性を向上できる点を強調した詳細なケーススタディは多々ありますが、時には一歩下がって(または俯瞰的視点で)、全体像を把握してみるのもよいことです。

したがって、今回のケーススタディでは、四半期ごとに子細な財務データを公開している、以下の3つの中規模F2Pモバイルゲーム企業(時価総額10億ドル程度)の、ユーザー獲得におけるパフォーマンスを掘り下げてみましょう。

  • スウェーデン発アイテム探しゲームのスペシャリストG5 Games
  • 新たな盛り上がりを見せる米国のパブリッシャーGlu Mobile
  • フィンランドの「アングリーバード」の開発者Rovio

各社の動向

過去2年間のG5 Gamesの業績を振り返ってみると、なぜ2017年にベストパフォーマンスを見せたゲーム株であったかがお分かりいただけることでしょう。四半期の売上高はほぼ4倍に増加し、純利益(EBIT、税引前利益)も右肩上がりの伸びを見せています。

その理由は、G5がUA関連支出において、堅実かつ慎重な投資を行っていることにあり、「Hidden City」と「Secret Society」の獲得顧客による売上は1億ドル以上となっています。

Glu Mobileの状況もよく似たものとなっています。2017年の自社のトップゲーム「デザインホーム」の販売中に巨額(3000万ドル以上)の顧客獲得のための投資を行ったことで、四半期の売上が急伸し、同社の営業利益(調整後EBITDA)にも影響が生じています(ただしGluは米国会計基準では赤字となっています)。

Rovioの動向は2017年末まではG5 GamesやGlu Mobileとよく似ています。

同社は2017年にUAに多額の投資を行い、特に「アングリーバード2」においては売上高とEBITの双方が増加しています。 しかし、過去6ヶ月間はUA関連支出が減少しており、他の要因と相まって売上高は著しく下落しています。

ここで重視すべきことは、上述の3企業すべてが、2017年に顧客獲得のための積極的な投資を行っているという点です。G5 GamesとGlu Mobileの四半期の売上高に占めるUA関連支出は20%から25%以上に増加しました。実際に、第2四半期のGluのUA関連支出は、四半期売上高の40%を占めています。 同時期のRovioの変貌ぶりはさらに顕著です。 2016年の同社の、売上高に占めるUA関連支出の割合は10%にも満たないものでした。

また、2017年にピークを迎えた後、3社すべてが四半期の売上の25%以上をUA関連支出に充てるようになっています。2年前と比較すると、いかに状況が大きく変化しているかをお分かりいただけることでしょう。

因果関係は?

もちろん、こうした分析の因果関係は証明できるものなのかを、疑問に思われた方もいらっしゃることでしょう。おそらく、これらの企業の売上と利益はすでに順調な伸びを見せており、結果としてより多くの資金をUAに充てられるようになっただけで、UA関連支出の増加が必ずしも売上と利益に貢献したと言い切れないのではないでしょうか?

この疑問への答えは、四半期ごとのUA関連支出の変動が、売上と収益性にどのような影響を与えているかを見ていくことで、導き出すことができます。

まずは、G5 Gamesを見てみましょう。下記のグラフは、UA関連支出が前四半期と比較してどの程度増減したかどうかと、四半期ごとの売上と利益の変動を示しています。すべての数値は前四半期比の伸び率となっています。

G5 Games のUA関連支出の増減と売上や利益の変動の相関性は、完全とまではいきませんが非常に高いことがわかります。もちろん収益は変動の激しい指標ではありますが、概してUA関連支出が前四半期と比較して増えれば、売上や利益も増加していると考えてよいでしょう。

マーケティングチームがこうしたことを理解した上で、ユーザー獲得に充てる金額を増やせば増やすほど、売上も増加します。G5 Gamesのマーケターは明らかにそうした点を意識しているように見受けられます。

Glu Mobileの動向もよく似ており、完全ではないものの、UA関連支出と売り上げに高い相関関係が見られます(なお、Glu Mobileは赤字計上となっているため、こちらのグラフには利益が指標として入れられていません)。

Rovioに関しては、UA関連支出と売上に強い相関関係が見られ、UA関連支出の増加(または減少により)、売上も上下しています。利益との相関関係にはバラつきが見られますが、これはビジネス上の他の問題が原因の1つとなっていることが考えられます。

利益を生む投資

これまでの話をまとめると、前述の3企業を8四半期にわたって追跡したところ、追跡期間中の3分の2以上において、売上の変動とUA関連支出の変動に相関が見られ、利益に関しては、追跡を行った期間中の半分において、利益の増加とUA関連支出の増加に相関が見受けられました。

次のグラフで、各企業の四半期ごとのこうした傾向を視覚的に見ることができます。棒グラフが上に伸びているほど、UA関連支出と売上の相関性が高く、棒グラフが低いほど、両者の相関性が低くなります。

興味深いことに、Glu Mobileは3社の中で最も売上とUA関連支出の相関性が低く、特に2017年の第3四半期においては、大きくマイナス側に動いています。これは、同社のUA関連支出が減少したにも関わらず売上が上昇を続けたことが原因ですが、その前の四半期において、GluのUA支出は売上高の40%を占めるピークに達しているため、おそらく間接的な相関関係があったと考えてよいでしょう。

より手短にまとめると、最終的な学びとしては、中規模のゲーム会社は最近の数ヶ月でUA関連支出を著しく増加させているということです。

もちろん、今回取り上げた3つの企業それぞれに独自の動向が見られますが、3社すべてが四半期の売上の少なくとも25%をUA関連支出に充てており、 またそうした投資を行った全社において期間中の売上が増加しています。 したがって、現在の市場においては、UAへの投資が売上と利益を増加させる上で、最も効果的なルートであるといえるでしょう。