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APAC地域におけるアドフラウド対策

携帯電話は誰にとっても日常に欠かせないパートナーとなりました。肌身離さずスマートフォンを持ち歩き、朝には新着ニュースをチェックし、外出先でゲームを楽しみ、一日中友人とメッセージを送り合い、ワンクリックで食べ物から洋服までをオーダーし、寝る直前まで手放さない、そんな毎日が当たり前となっています。

そうした中、モバイル広告への支出が急増し続けているということは驚きに値しない事実でしょう。Statistaの予測によれば、2018年のモバイル広告は1380億ドル規模に達し、 2021年までにさらに大きく成長を遂げる見込みとなっています。

しかしながら、そうした莫大なお金は、犯罪者をも引き付けることとなりました。モバイル広告分野に横行する典型的な悪行が、モバイルアドフラウドです。

APAC地域単独で、2018年に広告主がモバイルアドフラウドに費やしたコストは、340億ドルにも及ぶとされています。TrafficGuardのスペシャリストは、さらに最悪のシナリオとして、こうした損失コストが2022年までに560億ドルに達すると見込んでいます。

なぜ、APAC地域(アジア太平洋地域)で、このようなアドフラウドが急激に増加しているのでしょうか。広告主やパブリッシャーは、アドフラウドからの搾取をどのように回避できるのでしょうか。今回はこうした点を詳しく掘り下げていきます。

APAC地域におけるアドフラウド事情

まずはじめに、TrafficGuardのレポートを読み込み、APAC地域におけるフラウドの実情を把握していきましょう。

同社が作成した「マルチポイント分析および機械学習の活用によるアドフラウド対策」は、マレーシア、タイ、インド、インドネシア、韓国、オーストラリア、日本、フィリピン、中国、シンガポールなどを対象に、アドフラウドの現状を調査したレポートです。

この調査レポートによると、2018年のAPAC地域におけるアプリインストール13件のうち1件が、実際のユーザーが関与しないインストールでした。

アドフラウドは、検出プラットフォームやトリックアトリビューションプラットフォームを回避するために、ますます巧妙な手口を用いるようになっており、結果として各企業はAPAC地域全体でのフラウド行為に多額を投資する羽目に陥っています。

しかしながら、こうしたフラウド行為は、地域全体にまんべんなく発生しているわけではありません。たとえば、中国は、アドフラウドの温床とされています。TrafficGuardのレポートでは、2022年時点での、広告主とパブリッシャーの中国国内でのアドフラウドによる損失額は、190億ドルにも上るとの予測がなされており、中国での拡大を狙う広告主にとって、やっかいな課題となっています。

また、1日に35時間程度の時間をアプリに費やすユーザーが多い地域は、アドフラウドの被害が特に顕著となっており、その影響を受けやすくなっています。中国をはじめ、韓国、日本、オーストラリア、インドネシアがそうした条件を満たしており、招かざれざる客を呼び寄せてしまっています。

さらなる懸念点として、同レポートは、詐欺師がこの先、スマートフォンが徐々に普及しつつあり、かつ、アドフラウドの検出技術が後れを取っている国々に目を向けると予測しています。

こうした場所においては、アドフラウドの検出や防止対策を行わない広告主が、1000万ドルの広告キャンペーンを実施したとしても、そのうちの260万円がアドフラウドに掠め取られてしまう、といった事態が発生しかねないのです。

フィリピンやインドなどの、今後さらにスマートフォンの普及が進んでいく市場では、アドフラウドを阻止するための適切な手段を講じなければ、将来的にパブリッシャーや広告主にとって、リスクの高いエリアになりうるでしょう。

アドフラウドの影響を軽減するためには

アドフラウドを完全に阻止することは極めて困難です。詐欺師の手口がますます巧妙化しているため、アジア地域においてアドフラウドを根絶させることはまず不可能といっていいでしょう。しかしながら、各企業がこうした問題を軽減させるための手段は存在します。

TrafficGuardが提案する最も有力な対処法は、多点分析を活用したフラウド防止措置で、アカウントに入金がおこなわれる前に、不正支出を発見することです。

これにより、広告支出が不正ソースにアトリビュートされる前に、リアルタイムでフラウドをブロックできるようになります。広告の取引ごとに発生した何百ものフラウド指標を分析し、無効なトラフィックが検出された際に即座にブロックすることで、フラウドの可能性を減少させ、キャンペーンパフォーマンスを改善させることができるのです。

しかしながら、フラウド行為を減らすための手段は他にも存在します。まずは、信頼できるパートナーと組むことが何よりも肝心です。細分化されたモバイルアプリ市場を抱えるAPACにおいては、リーチを売り文句にする業者が魅力的に映るかもしれませんが、パートナー選びにおいては、フラウド対策に真摯に取り組む業者に限定することをおすすめします。

さらに、適切なアクションが起こっているかどうかを測定することも一案でしょう。フラウドの脅威にさらされるリスクの高いエリアにおいては、クリックないしインプレッションに対する支払から、コンバージョンに対する支払いに変更することで、問題を解決できるかもしれません。また、第三者機関の広告購買監査サービスを利用し、投資をおこなった広告が確実に表示されているかを確認するのもよいでしょう。

また、今後はリアルタイムで詐欺師たちと戦うために、機械学習などのテクノロジーにより一層目を向けていく必要があるでしょう。

AIを活用し、何百万もの広告のやりとりにまたがってリアルタイムで不正行為を特定することで、広告主は広告詐欺師から徐々に広告費を取り戻すことができるようになるでしょう。

そして、機械学習のさらなる進化にともない、各企業が大規模なスケールで世界中のアドフラウド問題に取り組めるようになり、今後数年以内に大部分のアドフラウドを一掃できるような可能性が切り開かれるかもしれません。

総括

現状、アドフラウドを確実に食い止めるアプローチは存在しません。APAC地域やその他地域で蔓延する脅威に立ち向かうため、業界全体が団結し問題に取り組んでいく必要があるでしょう。

TrafficGuardの最高オペレーション責任者兼創設者であるLuke Taylor氏は、次のように述べています。「大金を搾取するフラウドは、さらに深刻化する問題であり、こうした脅威に対抗するためには、専用の防止措置を講じていく必要があるでしょう。そのためには、広告主が広告費を取り戻せるように詐欺行為の報告を行なうだけではなく、無効なトラフィックを積極的にブロックし、広告主とサプライヤーの双方にフラウドの軽減をリアルタイムで報告していくことが肝心です」

アドフラウドは、刻一刻と変化するビッグデータ主導型のモバイル広告業界と切っても切れない厄介な存在であることは間違いありません。しかしながら、アドフラウドはまた、向かう所敵なしの存在ではないのです。

エコシステムのあらゆるプレイヤーが集団結し、不正を特定し報告するためのベストな仕組みづくりをおこない、機械学習のような最新テクノロジーの活用でリアルタイムで不正と闘うことにより、アジアおよびその他の地域でのフラウドの影響を大幅に軽減できるようになっていくでしょう。