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モバイルゲーム業界における2019年のキートレンド

新しい年の動向予測においては、何も変わらないという見方もあれば、全く新しいトレンドが台頭し、今までのトレンドが覆されるという見方もあります。こうした相反する見通しの中で、真実を見極めることは困難ですが、タイムリーに情報を入手しアップデートをおこなうことで、成功の道は拓かれていくでしょう。

500億ドルの市場規模へと急激な成長を遂げたモバイル業界においては、2019年も勝者独占型のマクロ経済、企業統合、よりスマートなUAやマーケティングといった長期的なトレンドが続いていくことが見込まれます。

しかしながら、未来は本質的に予測不可能なものであり、誰もが予期せぬ驚くべき展開に向かうことがあるのもまた事実なのです。

現在の状況

2018年における大きな出来事の一つとして、中国の新作ゲームの認可プロセスの停止があげられます。政府の正式な発表がないままに施行された同規制により、TencentやNetEaseといったマーケットリーダーの時価総額が数十億ドル規模で下落するなど、中国国内の産業に大きな影響がもたらされました。

2019年において、こうした規制による影響が、さらに深刻化することは明白です。コンテンツルールが厳格化され、よりゲームの社会的インパクトが強まる中、中国の大手ゲーム会社は将来的に国内におけるゲームタイトル展開をより絞り込み、海外への投資を増やすなどの戦略転換をおこなっていくでしょう。

こうした動きは、すでにある程度現実味をおびてきています。Tencentは現在、Epic、Supercell、Activision Blizzard、Bluhole、Glu Mobileなどのゲーム企業の所有主ないし大株主となっており、NetEaseは2018年にBungieやImprobableなどに多額の投資をおこないました。

グローバルな成長を続けながらも、排他的な進化を遂げているモバイルゲーム分野において、今後中国企業が、欧米市場や、インドなどのアジア市場で、より台頭してくることは想像に難くありません。

米国のゲーム企業もこうした点で、より活発な動きを見せています。Zyngaは過去2年に10億円を費やし、Small GiantやGram Gamesなどのモバイルゲーム開発者を買収し、グローバルにオーディエンスの拡大を続けています。

同様に、新規公開米国株(IPO)の流れを受け、Jam CityやScopelyなどの米国のモバイルパブリッシャーが、上場前の企業価値向上を目的として、既存ないし新規IPタイトルの獲得の機会を狙っています。

こうしたことから、2019年においてはM&Aがキートレンドとなり、大小の規模を問わず数多くの買収・合併がおこなわれ、世間を賑わせることになりそうです。

ハイリスク・ハイリターンの人気IP

モバイルゲームビジネスの要とされてきた、ダウンロードやユーザーの獲得や拡大、収益の生成自体はより容易になりつつありますが、2019年においても、収益性は多くのゲーム会社を悩ませる課題となるでしょう。

多くのゲームが一時的に高い運用収益をあげることができるものの、UAコストがネックとなり、持続的な商業的成功を維持しながら、拡張していくことは非常に困難になっています。

時間をかけずにオーディエンスを獲得するべく、高額なIPへの投資が主流化する中で、2019年はこれまでは成功を収めるとみなされていたゲームタイトルの数々が苦戦を強いられることが懸念されます。

こうした傾向は、昨年に、TinyCoのMARVEL Avenger Academyや、Disruptor BeamsのThe Walking Dead: March to Warがサービスの終了を発表したことからも明らかです。

また、こうした流れを受け、ソフトローンチ期間中にサービスを中止する新作IPタイトルが増加しています。2018年においては、NordeusのMOBAであるSpellSouls、ArmadaのQuantum Gate、GluのTitan World、バンダイナムコのDoctor Who: Battle of Timeなどが、正式リリースにいたることなくサービスを終了しました。

こうした課題を残しながらも、2019年は人気IPを活用したゲームタイトルが、引き続き多数リリースされることでしょう。Zyngaは今後、ゲーム・オブ・スローンズとハリー・ポッター、そして2020年にはスターウォーズの大型IPタイトルのリリースを決定しており、GluとGameloftは共同で、ディズニー/ピクサーのキャラクターをつかったゲームの開発を進めています。また、ポケモンGOが大きな成功をおさめたNianticは、「ハリー・ポッター:魔法同盟」でロケーションベースゲームにおける新たな成功を狙っています。

さらには、物議を醸したDiablo Immortalも記憶に新しい中、今後Call of Duty、Skylanders、Gears of Warなどの人気タイトルのモバイル版のリリースが予定されています。

ゲーム業界の新勢力

このように多くにおいて昨年同様のトレンドが続く中で、今後現状を打ち破るようなトレンドは起こりうるのでしょうか。

アプリ市場においては、長きにわたり続いてきたApp StoreとGoogle Playによる7対3の複占状態がゆらぎつつあります。また、かつてはSteam一強であったPCゲーム市場は、Epic Game StoreやDiscordが開発者に、より高い収益分配と健全なコミュニティを提供し始めたことで、様相が大きく変化しています。

さらに、Epic Game Storeは、今年中にAndroidでのローンチを予定しており、これまでiOSベースのマネタイズに偏りがちだったモバイルゲーム開発者にとって、新たな強力なプレミアムゲーム市場となる期待が寄せられています。

Androidを、さらに盛り上げる存在として注目されているのが、Rovioの子会社であるHatchが展開する定額制のゲームストリーミングサービスです。ゲームごとのダウンロードが不要で、スマートフォン、タブレット、TVなどで、広告やアプリ内課金に煩わされずにゲームを楽しめるサービスは、2019年のゲーム業界においても注目の的となるでしょう。しかしながら、認知度においては今一つ遅れをとっていることもあり、今後より多くのオーディエンスにサービスを知らしめるための戦略策定と実施が必須となりそうです。

また、勢いを増し続けているブロックチェーンベースのモバイルゲームも、引き続き注目を集めるでしょう。柔軟なリファラル(紹介)制度や、ロイヤリティプログラムを設けているブロックチェーンゲームは、今後さらなる成長の余地が見込めるかもしれません。

eスポーツとハイパーカジュアル

2019年はまた、モバイルeスポーツがついにブレイクし、ニッチなタイトルの数々が高い継続率とマネタイズを実現できるようになるかどうかを見極めるうえで、勝負の1年となりそうです。

 これは、Critical Ops、Guns of Boom、Force of Freedomといった一定のオーディエンスを抱える既存タイトルを否定しているわけではなく、Super EvilのVaingloryが、もともとモバイル向けのMOBAとしてローンチし、のちにPCやコンソールプレイヤーをサポートするクロスプラットフォーム型に転換したことからも分かるとおり、現状、モバイルゲーム単体ではLeague of LegendsやDota 2、Overwatchなどに対抗できるほどの十分な実力がないと受け止められているためです。

同様に、FortniteやPUBGの成功を受けて、次々と登場しているPC/コンソール/モバイルのクロスプラットフォーム型ゲームが、マスオーディエンスの獲得に苦戦することになるかもしれません。

モバイルゲームがもっとも得意とすることはなんでしょうか。それは、短時間でより多くのセッションがプレイでき、細やかなパーソナライズがおこなえるという点です。こうしたことから、チャット、メッセンジャー、インスタントゲームなどを内包する、カジュアル/ハイパーカジュアルモバイルゲームは、2018年がまさにそうであったように、今後も多くの成長機会が見込めることとなりそうです。

Ubisoft傘下にあるKetchappや、拡大にむけて昨年2億ドルの投資をおこなったVoodooのようなパブリッシャーにとって、ユーザー獲得やダウンロードの促進はそれほどの困難をともなわないでしょう。

しかしながら、効果的にオーディエンスを引きとめ、マネタイズをおこなうことができれば、あらゆるパブリッシャーが成功的な1年を体験できるともいえるでしょう。