" alt="">

モバイル動画広告の発展

モバイル動画広告は、テレビCMのようにクリエイティビティ溢れる表現で、人々の感情を動かすことができます。併せて、柔軟に大量のデータを活用する、といったデジタル広告が持つ本来の特長も有しています。こうした優れた機能をモバイル動画広告が持っているにも関わらず、広告主が注目するまでには時間がかかったように感じます。

と言うのも、動画をストリーミングして媒体に組みこむ技術は決して新しいものではなかったからです。それにも関わらずモバイル動画広告注目されるまでに時間がかかったのは「ネットの接続速度が遅い」「データの接続費が高い」「ユーザーがモバイル動画広告を受けつけなかった」といった理由が挙げられます。しかし、近年はこうした課題がクリアされ、モバイル動画広告費がパソコン向け広告費を追い越そうと急伸しているのです。

モバイル動画広告の利点

メディア調査会社「Zenith」のレポートでは、モバイル動画広告費が2018年までに180億ドルに成長すると予測しています。その理由は明快で、動画広告は従来のバナー広告に比べて、ユーザーとのエンゲージメントを生み出しやすく、広告主のROIも最大化しやすいからです。それにより、モバイル動画広告は開発者とパブリッシャーの両方に利益をもたらすのです。

現在、多くのアプリ会社が自社のアプリのプロモーションのために、モバイル動画広告を活用しています。それと同時に、自社のアプリ内の広告枠に動画広告を表示させることにより、収益化も図っています。これにより、多くのアプリ会社がユーザーに無料でアプリを提供できるようになっています。

アプリの中で最も収益性の高いカテゴリーはゲームです。ゲームアプリでは、プレイヤーに動画の視聴と引き換えに、経験値やコインなどのインセンティブを提供するリワード動画広告が人気です。特に、アプリ内課金を好まない中国などのアジア諸国でよく使われている手法です。

また、広告主などもデジタル動画広告を支持しています。広告の業界団体「IAB」が先日発表したレポートによると、31の国・地域の広告主、代理店およびパブリッシャーのうち約90%がデジタル動画広告を利用しており、さらに今後投資を増やす予定であることが明らかになりました。

こうした事実がある一方で「4G環境が整備されておらずネットの接続速度が遅い」「利用できるデータ容量に制限がある」といった地域が世界中に多く存在しているため、まだまだ動画広告の普及にはハードルがあります。その他にも異なるOSへのターゲティング、多様な広告フォーマットの存在、コスト、モバイルデータの利用状況、そして新商品が発売されるたびに変化するスマートフォンの画面比率などの課題が残っています。

動画広告の普及を制限している要因

東南アジア、南米、アフリカなどの地域では、モバイル動画広告の普及が主に2つの理由で阻害されています。1つ目はネットの接続性の低さです。現在こうした地域にいる数百万人の人々は、2Gもしくは3Gでしかネットワークに接続できません。2つ目は、スマートフォン利用者が増加する一方で、ネットの接続速度や使用できるデータ量が限られてしまっていることです。

しかしながら、これらの問題に解決方法がないわけではなく、Wi-Fi環境下で広告をあらかじめロードさせることなどで対応できます。ネット速度が遅いために動画広告の配信が難しい場合には、静止画広告を採用することも可能です。どちらにしても、モバイル動画広告を最大限に活用できているとはいえません。

このように技術的な課題は残っているのですが、動画はアプリだけでなくモバイルでよく利用されるサービスにも大きく貢献できると思っています。たとえばARを使った革新的なクリエイティブなどでエンゲージメントを増やす手法がますます求められています。クリエイティブの種類が多いほど、より多くのフォーマットを試すことができ、広告主にこれまでよりも多くの利益をもたらすことができるでしょう。今後、モバイル動画広告を持続的に発展させるためには、ユーザーが夢中になれるようなストーリーやこれまでになかったような方法で動画を取り入れたり、モバイルでしか実現できないユーザー経験を提供したりして、ユーザーを引き付けることがますます重要になっていくでしょう。

モバイル動画広告は、異なるタイプのユーザープロフィールをもとに正確にターゲットを絞り込むことで、時間・場所・嗜好にあわせて関連性の高い広告を表示できます。それに加えて動画広告にARの技術を導入したり、リアルタイムで広告をストリーミングしたりすることによって、ユーザーとの親和性がより高い広告キャンペーンを提供することができます。

もちろん、これらは未来についての1つの見解にすぎません。現在のモバイル動画広告では、パソコン向け動画広告でできる全てのことができるわけではありません。様々な課題はありますが、モバイル動画広告と私たちの業界が進んでいる道は明るい未来である、と私は信じています。