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中国ソーシャルメディアの欧米諸国との違い

欧米視点で見た中国のソーシャルメディアは、圧倒的であり、また同じくらい魅力的なものと映ります。中国のソーシャルメディアエコシステムは、他に例えようのない、独特なものです。

Facebook、Twitter、Googleといった巨大企業は、中国ではインターネット検閲ポリシーの下で禁止されています。そして、その空白の中に、中国ソーシャルメディア界の大手が各々の地位を確立しようと入り込んで来ています。

この隙を狙って中国のIT大手企業が莫大な規模に成長し、中国だけのソーシャルメディアの生態系が作られました。

真に巨大で、閉鎖的な市場

中国のオンラインユーザー人口は8億人以上で、全世界のオンライン人口の20%を占めています。 これはアメリカとヨーロッパのオンライン人口を合わせたものよりも大きい数値です。

このような条件のおかげで、中国のIT企業は海外進出をしなくても、十分に勢力を伸ばし、成功することができました。 マーケティングリサーチデータを提供する企業によると、Tencentは2018年第1四半期に117億ドルの収益を上げ、Facebookとの差はたった3億ドルでした。Tencentのソーシャルメディアサービスの大部分が、ほぼ完全に中国国内におけるものであるにもかかわらずです。

TencentがFacebookを追いつくことができたのは、彼らだけの強力な武器であるWeChatのおかげでした。中国市場では、メッセンジャーアプリ、動画プラットフォーム、その他のソーシャルメディアサービス間での競争がありますが、その中でもWeChatが群を抜いているということです。

様々な機能をする WeChat

 

WeChatの重要性を決定づける経済機構

WeChatは、中国のソーシャルメディアエコシステムの中心です。中国国内で最もダウンロードされたアプリであり、7億5,000万人のユーザーがいます。中国の人口の4分の1が、WeChatを毎日開いています。

その人気の大きな理由は、WeChatが単なるメッセンジャーアプリ以上のものであるためです。ユーザーが必要とする可能性のあるものはすべて、プラットフォーム上に存在します。休暇の予約、医師の診察予約、映画や衣料品の購入、タクシーの手配、友人とのゲームプレイなど。国内で人気のQRコードプラットフォーム、Alipayと連携しており、外出先での支払いにも使用できます。

WeChatは、それ自体が配信プラットフォームでもあります。但し、ユーザーにアプリの全機能を実行可能にするのではなく、2億人のユーザーが何百万に及ぶ「ミニプログラム」にアクセスできるようにします。

ミニプログラムとは、大規模アプリ内で実行される小規模かつダウンロード可能なアプリで、これによりWeChatが非常に動的、柔軟で、また圧倒的に便利なものとなります。

FacebookとSnapchatの両方がプラットフォームにゲームを投入するなど、欧米の市場がミニプログラムというコンセプトの重要性に気づき始めた一方で、WeChatは遥かに先を行っています。

これは、中国人が周囲の世界と交流するための手段です。そうすることで、欧米諸国の同種のソーシャルメディアサービスに比べて、国民にとって間違いなくさらに重要なものとなります。

大陸規模の市場への配信

しかし、WeChatが疑いなく中国の社会経済と社会の両方で中心的な役割を果たしている一方で、実際には中国のソーシャルメディア環境は驚くほど細分化されています。

例えば、WeChatは中国最大のメッセンジャーアプリかもしれませんが、South China Morning Postは、QQやMOMOなど、他の4つのコミュニケーションアプリを市場の主要プレーヤーとしています。

また、ソーシャルビデオの展望に関しては、市場に何百万人ものユーザーを誇り非常に幅広い視聴者にサービスを提供する、少なくとも10のプラットフォームを既に特定できています。これについては、前回の投稿で詳しく説明しました。

よって問題は、これらのアプリがすべて共存できるのはなぜか?ということです。中国におけるこの答えは、国内市場が非常に大きく、大陸中の他のほぼすべての市場よりも大規模なため、サービスが何の影響も受けずにターゲットとなる人口統計グループやエリアへのアピールを細分化できるためです。

動画アプリのHuoshanは、この好例です。Huoshanは、北京や上海といった都市の醸成された市場ではなく、スマートフォンのユーザー基盤が発展を見せる中国の第2世代都市を対象としています。

こうした戦略は、小規模市場では経済的に実行不可能であることが容易に実証されますが、Huoshanは中国の市場規模が大きいため、急速に成長するユーザー基盤を誇り、市場での地位を確立しています。

端的に言うと、中国のソーシャルメディア環境の規模は、企業にとって全国のユーザー基盤を構成できる規模のオーディエンスを開拓するのに十分で、この点で欧米諸国の状況とは異なっています。このため、企業が対処すべき興味深い市場の動きが生まれます。

欧米諸国を見据える中国のソーシャルメディア文化

最後に、中国の閉鎖的なソーシャルメディア市場が開かれてきているのに注意を向けることが重要です。このことは、中国で生まれ世界的なプレーヤーとなった、あるアプリの成功によって実証されています。

ショートビデオアプリのTikTokは、世界中でブームになりました。TikTokはショートビデオの配信アプリで、中国では「抖音」と呼ばれます。ユーザーは15秒の短い動画をアップロードして、世界中の人々と共有できます。

TikTokのホームエリアには、1日あたり1億5,000万人、月間3億人のアクティブユーザーがいます。多くの類似サービスが中国市場に参入していますが、TikTokのように世界的な注目を集めているものは他にありません。

このプラットフォームは今や全世界で10億インストールを数え、月間最大8億人のユーザーがいます。そして、欧米諸国のオーディエンスに合わせて名前とブランドの位置付けを変更することで、成功を収めています。

マーケティングプラットフォームとしてのTikTokは、BMWJeepWorld of Warcraftといった世界的なブランドからも注目を集めています。これらのブランドは、ショートビデオ、フィード広告、プラットフォームの垂直広告を利用してキャンペーンを成功させ、最近ではSocialBeta 2018年度最優秀キャンペーン賞を受賞しました。そのクールで流行りのブランディングは世界中で、このアプリで「より良い生活を記録」しようという世代の共感を呼んでいます。

Tiktok広告イメージ

これは、中国のソーシャルメディアのコンセプトが、一部の人が誤解しているほど欧米諸国の期待からかけ離れていないということを示しており、よって重要なものです。

言語と文化の障壁がなくなると、メカニズムだけに集中することが可能になります。抖音とTikTokが実証したことは、中国のソーシャルメディアプラットフォームの背後にあるメカニズムが、世界中から共感を得られるものである、ということです。

これは、ミニプログラムや潜在的に「地域特有の」ソーシャルメディアプラットフォームといった、中国のソーシャルメディア環境から生まれた他の開発が、欧米の市場に容易に再適用できることを意味します。

ユーザーへの理解が最も重要

中国のソーシャルメディアの展望は、欧米の市場とは異なります。中国のオンライン人口の規模、規制状況、そして文化的背景は、その社会的状況が米国、欧州、その他のアジア太平洋地域で見られるものとは大きく異なることを示しています。

中国においてソーシャルアプリは、おそらく他のどの地域よりも家庭生活に不可欠なものとなっています。WeChatの市場席巻に大部分の関心が向けられている一方で、地域や人口統計専用プラットフォームの出現を見ると、中国企業がどのようにしてあらゆる場所の消費者に上手くリーチしているかが分かります。

問題は、中国市場の習慣がどこまで広がることができるかです。中国のソーシャルネットワークは当初、微博とTwitterとの類似など、欧米諸国のコンセプトを模倣することで知られていましたが、抖音のTikTokとしての成功は、中国のコンセプトが他へも伝わることを示すものです。

従って、中国の状況は異なるものの、それはプラットフォームのメカニズムにおける差異というよりも、より文化・規制面での差異であることに注意することが重要です。

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