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倍増する広告ブロックの動向

これまで広告ブロックはデスクトップが抱える問題とされてきましたが、モバイルにおいても不快感をいだいた消費者が広告をブロックするようになってきています。

モバイルマーケティングは、ターゲットオーディエンスのエンゲージの向上を狙う広告主に多くのメリットをもたらします。しかしながら、広告ブロックの利用が増加したことで、モバイルは個人向けの常時接続デバイスという、これまでに鍵となっていた属性を失いつつあります。

広告ブロックは長らくの間デスクトップが抱える問題とされており、スマートフォンでは特に問題視されていませんでしたが、最新の調査では、主要市場でモバイル広告のブロックが倍増していることが判明しています。

考えられる理由としては、モバイル広告がユーザーが見たいコンテンツの中にますます侵入していることや、また、広告ブロックアプリがデスクトップからモバイルに拡張され、モバイルブラウザでも使えるようになったことが広まりつつあることが挙げられます。

モバイル広告のブロックは割合は低いながらも着実に倍増

より俯瞰的に見てみると、モバイル向けの広告ブロックの利用率は、市場ごとに違いは見られるものの一桁で推移していることがわかります。

パブリッシャーの業界組織であるAPOが2017年に発表した最新の広告ブロック監査レポートによると、英国ではモバイル広告のインプレッションの1.3%がブロックされ、デスクトップでは30%近くがブロックされています。 モバイル広告のブロックは依然として低い数値ではありますが、2016年においてはわずか0.6%に過ぎなかったことは注目に値します。つまり、わずか1年でモバイル広告のブロック率が2倍まで跳ね上がったということです。

出典: https://www.audienceproject.com/blog/key-insights/insights-attitude-towards-advertising-use-ad-blocking/

こうした傾向は最近Digidayが発表した調査結果にも反映されています。米国の現在のモバイル広告ブロック率は、訪問者のセッション数のうち5%となっており、わずか2%であった2016年から急増しています。英国においては当初2%であったものが、2018年には8%となり、4倍もの伸びをみせています。デスクトップの広告ブロックが広く利用されているドイツでは、13%と他国を大きく引き離す結果が出ています。

こうした結果は調査により差異が見られ、モバイルの広告ブロック率は、パブリッシャーごとに大きく異なっています。英国のDennis Publishingは、市場の成長にともない、2016年の2%から、今日では4%へ上昇したと発表しています。 しかしフランスのル・モンド紙では、モバイル広告のブロック率は20%で、デスクトップとほぼ同等の結果だったとの報告がなされています。

モバイル広告のブロックが増加しているという調査結果は、デスクトップで広告ブロックの利用が浸透し、西ヨーロッパ市場のユーザーのおよそ5分の1から3分の1が広告ブロックを利用するようになったことが、デジタルマーケターの間で知られ始めたころに発表されたものです。

モバイル広告のブロックは、多くの市場がモバイルファーストとなり、デスクトップからスマートフォンへとマネタイズトラフィックを移行し始めている現在の傾向に相反する流れを生み出すのではないかという懸念が生じています。

広告へのいらだちと広告ブロッカーの手軽さ

モバイルの広告ブロックは、現在のところはデスクトップほどの脅威ではないとしても、モバイルマーケターは、なぜ主要広告市場での広告ブロックが前年比で倍増しているかを慎重に考察せねばなりません。明らかな原因として考えられることは、侵入型広告にいらだちを覚えるユーザーが増え、そうしたユーザーが広告ブロックに関する豊富な知識を身につけ始めたということです。

出典: https://www.audienceproject.com/blog/key-insights/insights-attitude-towards-advertising-use-ad-blocking/

GlobalWebIndexが米国のモバイル広告ブロッカーの利用に関する調査を行ったところ、およそ過半数が、あまりにもたくさんの煩わしい広告がスクリーンを埋め尽くしコンテンツを覆ってしまうために、広告ブロッカーを利用しているということが明らかになりました。プライバシーの問題と回答したのは約3分の1弱であり、データ許容量やバッテリーの消耗を心配したためと答えたのはわずか約20分の1にすぎませんでした。

広告ブロッカーの使用者は、モバイルエクスペリエンスを邪魔する広告があまりにもたくさんあると感じており、それらに対処する知恵をつけ始めているのです。これまでモバイル向けの広告ブロッカーは、ユーザーが自身でダウンロードするアプリを選び、使い方を調べる必要がありましたが、これはもはや過去のこととなっています。 今日の広告ブロックはブラウザレベルで提供され始めています。

より増える選択肢

Appleは他に先駆け、Safariブラウザでの広告ブロックアプリ利用に対応しました。また、クッキーの無効化やブラウザレベルでトラッキングを防止する機能も提供しています。

GoogleのChromeブラウザのモバイル版では、デスクトップ版よりも厳しいブロックサービスが提供されています。すべての広告がブロックされるわけではありませんが、GoogleはCoalition for Better Adsの基準に違反するフォーマットを継続的に使用するサイトに警告を与える方針を発表しています。もしサイトが改善要求を無視した場合、モバイル上での広告表示がブロックされます。

Googleの規制対象となる広告ユニットは、スクリーンにとどまり続ける大型「スティッキー」広告、スクリーンの30%以上を占拠する広告、点滅する広告や音声付自動再生型動画広告であり、これらすべては自動的にブロックされます。

また、マーケットシェアはまだ小さいものの、6月末にMicrosoftがEdgeモバイルブラウザに広告ブロックのオプションを追加する意向を表明したことも注目に値します。

 かつては消費者が広告を避ける心配などありませんでしたが、これからのモバイルマーケターは倍増するモバイルの広告ブロックに対処していかなければなりません。デスクトップと比べるとブロック率は低いものの、ユーザーは広告を容易に回避できることに気づき始めています。

モバイルマーケティングキャンペーンが、ターゲットとするデバイスに確実にリーチできていた日々は終わりを迎えつつあります。よりよいクリエイティブな広告フォーマットや、ターゲティングの精度向上、パーソナライゼーションが、そうしたことの埋め合わせとなるように願うばかりです。